なぜ、毎日練習しても上手くならないのか?
「毎日部活で走っているのに試合で勝てない」
「ミニバス時代はエースだったのに、中学で伸び悩んでいる」
もし、あなたやあなたのお子さんがこのような悩みを抱えているなら、それは練習の「質」と「選び方」に問題があるかもしれません。

毎日ヘトヘトになるまで走っているのに試合で勝てない…。
それは、あなたが悪いのではなく『努力の方向』が少しズレているだけかもしれません。
中学女子バスケットボールは、身体的な成長期であると同時に、技術体系が大きく変化する重要な時期です。
本記事では、スポーツ科学と最新のバスケットボール指導理論に基づき、「上達を妨げる練習法」と「正しい改善策」を具体的に解説します。
1. 女子特有の身体的特徴を無視した「根性論」トレーニング
中学女子は男子に比べて筋力がつきにくく、関節の柔軟性が高い一方で、膝の靭帯損傷(特にACL:前十字靭帯)のリスクが高いことが医学的に証明されています。

女子選手にとって『膝』は選手生命に関わる重要なポイント。
根性で走り込むよりも、正しい姿勢で止まる練習の方が、怪我予防にも上達にもずっと近道なんです!
× やってはいけない:ひたすら走るだけのラントレ
スタミナは重要ですが、バスケットボールは「ストップ&ゴー」のスポーツです。
長距離走のような一定ペースのランニングばかり行っても、バスケに必要な心肺機能や瞬発力は養われません。
また、疲労困憊の状態での練習は、フォームの崩れや怪我の原因になります。
◎ 改善策:インターバルトレーニングと正しい着地
心拍数を上げる高強度の運動と休息を繰り返すインターバルトレーニングが推奨されます。
また、女子選手に多い「ニーイン・トゥーアウト(膝が内側に入り、つま先が外を向く状態)」を防ぐため、正しい着地姿勢(パワーポジション)を身につけるフィジカルトレーニングを優先すべきです。
2. 「試合で使えない」スキルトレーニングの罠
練習ではシュートが入るのに、試合になると全く入らない。
これは「ディフェンス」と「判断」の要素が欠けている練習が原因です。
× やってはいけない:コーン相手のドリル偏重
コーンを並べてのドリブルチェンジや、誰もいない状態でのレイアップシュートを何百本繰り返しても、実戦力は身につきません。
なぜなら、試合には「動くディフェンス」が存在し、常に状況判断が求められるからです。
コーンは動きませんし、プレッシャーもかけてきません。
× やってはいけない:ツーハンドシュートへの固執
ミニバスから中学に上がる際、ボールが大きくなります(5号球から6号球)。
この時期に無理にツーハンド(両手)のセットシュートを打ち続けると、打点が低くなり、ブロックされやすくなります。
◎ 改善策:1対1の導入とワンハンドシュートへの移行
ドリル練習の直後に必ず「1対1」を行い、スキルをいつ使うかを学ぶ必要があります。
また、世界的なトレンドおよびJBAの指針でも、女子選手の「ワンハンドシュート」習得が推奨されています。
ボールの下に手を入れ、片手で押し出すフォームへの移行は、最初は飛距離が落ちても、将来的には高い打点と正確性を生みます。

『ツーハンドの方が届くし入る』と思う気持ち、よく分かります。
でも、高校・大学とレベルが上がればブロックの高さも変わります。
将来のために、今、勇気を出してフォームを変えてみませんか?
3. 「システム」ばかりを先行させる戦術練習
「フォーメーション(決められた動き)」を覚えることに時間を使いすぎて、個人の基礎能力がおろそかになっているケースが多々見られます。
× やってはいけない:動き方だけを暗記させるセットオフェンス
「1番がここでパスして、2番が走って…」という手順だけを暗記させる指導は、相手ディフェンスが予想外の動きをした瞬間に機能しなくなります。
これを「パターン練習の弊害」と呼びます。

ディフェンスも同じです。
「1番はワンアーム、2番はディナイ、3番はヘルプして…」という指導は、私は逆効果だと思います。
オフェンスの状況が刻々と変わる中で、今自分は何番か考えている暇はありません。
考えているうちに、得点されてしまうことも多々あります。
◎ 改善策:スペーシングと状況判断(IQ)の育成
フォーメーションの前に、「スペーシング(適切な距離感)」を理解することが先決です。
- ドライブのコースを空ける
- パスを出したら動く(パス&ラン)
- 3人での合わせ(3on3)
これら基礎的な戦術理解(バスケIQ)がないまま複雑なプレイをしても、上達はしません。
4. メンタルを消耗させるだけの指導環境
上達しない最大の原因は、実は「心理的安全性」の欠如にある場合も多いです。
× やってはいけない:ミスのたびに怒鳴る指導
ミスをした瞬間に怒鳴られると、選手は「怒られないためのプレイ」を選択するようになります。
これは「萎縮(いしゅく)」を生み、チャレンジ精神を奪います。
結果、消極的なパス回しや、責任転嫁のようなプレイが増え、チーム全体が停滞します。
◎ 改善策:ポジティブなフィードバックと具体的な指示
「ダメだ!」ではなく「今の場面では、逆サイドを見るべきだったね」と具体的に改善点を伝えます。
失敗を「学習の機会」と捉えられる環境が、選手の自律的な成長を促します。

ミスをした瞬間にベンチを見ちゃう選手、いませんか?
それは『萎縮』している証拠。
ミスを責めるのではなく『次はどうすればいい?』と問いかけるだけで、選手の目は輝き出しますよ。
5. 具体的な練習メニューの改善例
では、明日からどのような練習に変えるべきでしょうか。
効果的な練習構成の例を紹介します。
【ウォーミングアップ】
- ダイナミックストレッチ:動きながら関節可動域を広げる。
- コーディネーショントレーニング:リズムジャンプやボールハンドリングを組み合わせ、身体操作性を高める。
【スキル&判断練習】
- 判断つきハンドリング:コーチが出した指の本数を見てドリブルを変えるなど、「見ながら動く」練習。
- クローズアウト1on1:ディフェンスが遅れて出てくる状況を作り、シュートかドライブかの瞬時の判断を養う。
【スクリメージ(実戦形式)】
- 3on3:5on5よりも一人あたりのボールタッチ数が増え、スペースも広いため、個人の責任と判断力が養われる。
中学女子には最適な練習形式です。
まとめ:量より「質」と「理論」への転換を
中学女子バスケットボールにおいて「上達しない」原因の多くは、選手の能力不足ではなく、「非効率な練習法」と「身体特性への無理解」にあります。
- 女子特有の身体リスクを考慮したフィジカル強化
- コーンではなく「人」を相手にした判断練習
- ツーハンドからワンハンドシュートへの適切な移行
- ミスを許容し、チャレンジを促す指導環境
これらを意識して練習メニューを見直すことで、停滞していた成長曲線は必ず上向きになります。
バスケットボールは「習慣のスポーツ」です。
悪い習慣(練習法)を断ち切り、正しい理論に基づいたトレーニングを積み重ねていきましょう。

練習メニューを1つ変えるだけでも、変化は必ず起きます。
まずは今日の練習から『コーンではなく人を相手にする』こと、始めてみてください。
応援しています!
専門用語解説・補足情報
- ACL(前十字靭帯)損傷:膝関節の中にある靭帯の損傷。女子選手は男子選手の約2〜8倍のリスクがあるという研究データがあります(※医学的統計により変動あり)。
- ワンハンドシュート:片手でボールを支え、もう片方の手を添えて打つシュート。現在の国際基準であり、JBA(日本バスケットボール協会)も育成年代からの習得を推奨しています。
- スペーシング:コート上の5人が互いに適切な距離(約4〜5メートル)を保ち、オフェンスを有利に進めるための概念。
※本記事における指導法やトレーニング理論は、一般的なスポーツ医科学およびJBAの指導指針に基づきますが、個々の選手の身体状況に合わせて調整を行ってください。



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